安部太一 ”静寂のマチエール”
安部太一
”静寂のマチエール”
2020.7.4(sat) - 7.20(mon)
open 10:00 - 18:00
close / wednesday
7/4(sat) 安部太一 在廊
心を無くしたくないなぁ、と思います。
作品は受け取ってくれた人のものになって、代わりにお金だけでなく、
それ以上に何か大切なことも受け取る。またそれを糧に深め、作る。
10 年前、末藤さんは少し離れたところから作品とぼくをみていて、
しばらくすると近づいてきて、「いいですね」と言いました。
流れていく情報を拠り所にしないまっすぐな眼でした。
それがはじまりで今に繋がっています。
それが全てです。
安部太一
初めて921GALLERY で展示して頂いたのは2011年1月1日。
雪が降り積もる中、山陰と山陽をつなぐ険しい雪の山道を抜けて作品を大事に抱えて届けてくださった日のことを思い出します。
まだ、僕も安部さんも駆け出し。あの頃はとにかく楽しかったし、もっと純粋で単純でした。
陶芸家の父を持ちながら、音楽家を目指し上京。地元の島根にもどり陶芸をはじめ、様々な苦難を乗り越え作家として独立。いつもそばで見守ってくれていたエッセイストの椿野恵里子さんと結婚。
お互いことあるごとに岡山と島根を行き来しながら語り合い、安部夫妻とは永く関係を築いてきました。
僕にとって彼の手から生まれる作品は一言で言い表せられるものではありません。
素材、形、作り方、などの作業のすばらしさだけでは言い表せないのです。
だから僕は彼の作品を語る資格はないと思っています。彼は今、自分の作るものについてこう語っています。
“自然があり、花があり、暮らす家があり、部屋があり、家具があり、器がある。僕の仕事は大きな循環の中の一つ。
その関係性の中に自分のつくるものがただある“と。
そう言って静かに轆轤を回す姿に、どことなく少し肩の荷が降り、あの頃の単純で純粋な日のことを思い出させてくれました。
そして陰で支える椿野恵里子さんの存在は、いつも安部太一を勇気づけ、毎日工房にそっと花を活けていることを僕は知っています。
921GALLERY 店主